※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。
将来の売りやすさを考え、人気エリアの中古マンションを購入
今回取材に訪れたのは、モリタ装芸のリノベーション部門で働く田中(戸田)優希さんが暮らすマンション。夫の謙一さんと、2匹の猫と一緒に暮らしている。
「以前は東区の賃貸で暮らしていましたが、猫を飼いたくて去年の夏に中古マンションを探し始めました。それで、最初に見学に訪れたのがこの部屋だったんです。西区の中でも中央区寄りの利便性が高いエリアで、物件価格は700万円程。特にダメな理由が見つからなかったのですぐに購入することにしました」と優希さん。
「僕たちは二人とも長岡市出身。将来もずっと新潟市に住むかどうかは分かりません。戸建てではなくマンションにしたのは、売る時に手離れしやすいと思ったからです。築48年の古い建物ですが、立地がいいので売りやすそうだと思いました」(謙一さん)。
そして、購入したその部屋を1,000万円程の予算でフルリノベーションすることにした。
猫と共生できる部屋
「目指したのは猫と暮らしやすい部屋。例えば、玄関と廊下の間や、廊下とリビングの間などに建具を設けて、猫が自由にどこでも行き来しないようにしています。ただ、将来売却する時のことを考えて、猫仕様にし過ぎないことも意識しました」(優希さん)。
「それから、僕たちはキャンプが好きで、年に10回くらいキャンプに出掛けるんですが、以前の賃貸ではテントなどの汚れやすい道具を置く場所がなく、車に積みっぱなしにしていました。それで、道具を保管しやすいように玄関の土間スペースを広げることにしました」と謙一さん。
では、1976年につくられた部屋が、2023年にどのように生まれ変わっただろうのか?
↓
キャンプ道具が置ける広い土間スペース
まず大きく変わったのが玄関だ。以前の玄関は幅1mに満たない小さなスペースだったが、隣の壁を取り払い、5畳の個室があったところまで幅を広げた。
下駄箱があったスペースを可動棚にしたことで、天井近くまでスペースを有効活用できるようにもなった。
広さが約3倍になった玄関には、キャンプ道具が詰め込まれたキャリーワゴンが置かれている。
玄関土間と廊下を区切っているのは、モリタ装芸が得意とするオーダー建具。モールガラスが入った大きな引き戸は壁内に引き込める設計で、開放すると建具の存在がスッと消える。
「猫が玄関に出ないように設けた建具ですが、玄関ドアから入ってくる冷気や熱気を遮断するのにも役立っています」(優希さん)。
広くなった水回りに、オーダーメードの造作洗面台
玄関とLDKをつなぐ廊下は、改築前の位置から1.3m程左にずらしている。
床はサブロク板(910mm×1,820mmの板)を半分にカットした910mm角のラワンベニヤでラフな雰囲気を演出。廊下のすぐ左手がWICで、右手には洗面脱衣室と浴室が並ぶ。
改築前は0.75坪の浴室と2畳程の洗面脱衣室というコンパクトなつくりだったが、廊下の位置をずらしたことで、1坪の浴室と、ゆとりある広さの洗面脱衣室に刷新できた。
ラワン材を使った洗面台は、モリタ装芸の家具部門で製作されたオーダーメード。正面には主張しないタイルがあしらわれ、右手にはたっぷりと物を置ける機能的な棚が備えられている。
鏡やタオル掛けに至るまで、全てがシックなトーンで統一されているのが特徴だ。
その洗面脱衣室と廊下を挟んで反対側にあるのがWIC。
開放感を出すために天井まで高さがあるハイドアを採用。それは、湿気が籠りがちな鉄筋コンクリート造のマンションにおいて、なるべく空気が滞留しないようにするためでもある。
トイレはシンプルなモノトーン
廊下をさらに奥へ進むと、右手にトイレがある。
排管経路の関係から場所自体は変えずにデザインを刷新。モノトーンを基調とした空間に配されたタンクレストイレが美しい。ちょっとした壁のデッドスペースにはストック品を収納する棚が造作されている。
また、廊下の位置を変えたことでトイレの手前には手洗いスペースをつくる余裕も生まれた。
こちらもメインの洗面台と同様にラワン材を使った造作で、同じく床に使用したラワンベニヤと呼応する。
書斎はコンパクトな空間を最大限活用
廊下とリビングを隔てる引き戸の先が、このマンションのメインの空間。元の間取りでは入って左手に4.5畳の和室があったが、そこは2畳程の書斎につくり変えた。
「前の賃貸では部屋のコーナーにデスクと引き出しを置いていたので、新しく住むこの部屋には独立した書斎を設けたいと思っていました。できれば4.5畳くらい欲しかったですが、スペースの関係でこの大きさにしています。
中に猫が入らないように格子戸を付けていますが、暖房や冷房が行き渡るのもいいですね。
ここでリモートワークをしたりゲームをしたり。あとはキャンプで使う道具のメンテナンスや趣味の革細工もここでしています。コンパクトな空間ですが、作業スペースを使い分けられるようになったので、以前よりも作業性が上がりました」と謙一さん。
壁という壁に有孔ボードを張り、壁面を収納スペースとして活用することで、コンパクトでも使いやすいワークスペースができ上がった。
空間にフィットするL字型キッチン
書斎の反対側はキッチン。
排気経路の関係からキッチンの位置はそのままにし、ワークトップを広く使えるようにL字型キッチンを採用した。
キッチンの左側にはカップボートを造作し、調理家電を置くスペースに。ちょうどいい高さの吊り棚にはよく使う食器を収納。下部のキャビネットにはゴミ箱スペースを確保している。
「壁の上の方には梁が出っ張っていましたが、レンジフードを設置しやすいように梁の厚さ分、壁全体を厚くしています」と優希さん。
厚くした壁を掘り込んでつくったニッチもかわいいアクセントだ。
程よい艶感がある壁のタイルは名古屋モザイクのミステール。お客さんにも好評だという。
このキッチンで普段料理をするのは、飲食業界で6年間の勤務経験を持つ謙一さん。身長180cmを超える謙一さんが使いやすいように、キッチンは90cmと高めのものを選んだ。
「パスタをはじめ洋食を作ることが多いですね。あとは炒めるだけで作れるタイ料理とか。コンロはガス一択で迷いはありませんでした。例えばオイル系のパスタを作る時にフライパンを傾けてニンニクをオイルに浸す必要がありますが、IHだとそれが難しいんです」(謙一さん)。
自社製造の家具が散りばめられたリビング
キッチンの先にはダイニングテーブルとソファが並ぶ。
900mm角のダイニングテーブルはモリタ装芸の家具工場で製作したもの。二人暮らしにちょうどいい大きさだ。
窓辺にはソファがあり、窓からはマンションの敷地内に生えている桜の木を見下ろせる。
「TVボードもモリタ装芸の家具部門で製作したものです。社内に余っていたものですが、ちょうどいいサイズだったので頂いて使っています」(優希さん)。
リアルなモデルルームとして活用
最後に見せてもらったのが、リビングの隣にある5.2畳の寝室。
元々襖で仕切られていた6畳の和室を個室化した場所で、猫のトイレもこちらにある。
以上が謙一さん・優希さん夫婦が暮らすマンションの全貌だ。
「今回のリノベーションでは、壁のほとんどをモイスという自然素材由来のボードで仕上げています。なるべく端材を出したくなくてこの建材を選びました。リノベーションの現場では木材や内装材の端材が大量に出て、それらを廃棄することになりますが、長さが2.4mあるモイスは1枚で張れる部分が多く、端材が出にくいんです。環境にもいいですし、工事中に端材を運び出す手間も減らせました。調湿消臭効果もあり、料理のにおいが部屋に残らないことを実感しています」と優希さん。
たしかに部屋のどこに行っても猫のにおいもなく、すっきり爽やかな空気が流れていた。
「自分たちで考えながら全てを決めていったので、生活スタイルに合った部屋ができ上がりました。夜はお互い好きな場所で各々の時間を過ごすことが多いですが、互いの気配が分かる距離感もいいですね」と謙一さんは住んでからの感想を話す。
また、断熱改修による快適さも体感しているという。「壁内に断熱材を施工し、窓には内窓を取り付けました。ここに暮らしてから、冬の寒さや夏の暑さに悩まされることがなくなりましたね。居心地がいいので、休日は部屋で猫とリラックスして過ごすことが多いです」(優希さん)。
さらに、マンションリノベーションを検討しているお客さんに、参考のために見てもらえたら、と優希さんは話す。
「完成した直後の見学会はできても、実際に生活しているところを見てもらう機会はなかなかありません。ぜひリアルな事例として見て頂きたいですね。これからペットを飼おうと考えている方にもアドバイスできると思います」。
物件価格700万円+工事費1,000万円の合計1,700万円で実現したマンションリノベーション。新築注文住宅ほどの予算を必要とせず、賃貸では難しかった“自分たちらしい暮らし”を実現できた。
戸建てでも賃貸でもない、中古マンションリノベーションという選択肢。気になる方は、モリタ装芸のリノベーション部門に在籍する戸田優希さんに相談してみては?
田中(戸田)邸
新潟市西区
延床面積 60.50㎡(18.30坪)
構造 RC造
竣工年月 1976年(2023年1月リフォーム工事完了)
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平