【自由設計】中庭を望むコートハウスで、観葉植物と暮らす

※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。

 

衝撃を受けた希望が丘モデルハウス

3年前、長岡市の住宅街に家を建てたTさん夫婦。約50坪の敷地の手前には3台分の駐車スペースがあり、その奥には板張りのエントランス。さらに奥には白いガルバリウム鋼板の壁で覆われた2階建ての建物が連なっている。

「僕たちは2019年に結婚し、新築の計画を始めました。はじめはどんな住宅会社があるのか知らないまま2社ほど見学に行き、その帰り道に通りかかったモリタ装芸さんの希望が丘モデルハウスが気になって見に行くことにしたんです。入ってみると玄関ホールの先がワンルームになっていて、見たことのない開放的な間取りに衝撃を受けました。建具のデザインもおしゃれで、とにかく家の雰囲気がすごくいい。その時は妻は仕事でいなかったので、あとで『すごいところを見つけたよ』と連絡しました」(ご主人)。

「すごい熱量で伝えられたので、その1週間後に見に行ってみると、本当にその通りでした。その後も2~3社見に行ったんですが、改めて『モリタ装芸さんがいいね』となりましたね」(奥様)。

希望したのは中庭のある家。

「リビングが玄関の近くにあるのではなく、中庭を見ながら歩いて行ける廊下があるといいなと思っていました」と奥様。「僕は仕事柄朝が早いので、すぐに家を出られるように1階の寝室を希望しました」(ご主人)。

そんな要望をモリタ装芸長岡店の店長・樋宮僚(ひみやつかさ)さん、設計担当・阿部龍之介さんに伝えたという。

「後日ご提案を頂いた阿部さんの間取りは想像の上を行っていましたね。とてもワクワクしたのを覚えています」(奥様)。

 

ポーチや玄関から中庭をちらりと望む

駐車スペースから階段を4段上がったところがT邸のポーチ。

屋根と壁に囲まれた1坪の空間は杉板で仕上げられており、その雰囲気は山小屋のようだ。土間には観葉植物、壁には絵画が飾られていて、家に入る前からワクワク感を高めてくれる。

玄関ドアを開けると、右手にはルーバードアが付いた下足入れ、左手には横長のFIX窓があり、そこから庭を眺められる設計だ。

「外からは見えないプライベートな中庭は、ポーチまでくると足元からちょっと見えて、玄関に入ると今度は違う高さからまたちょっと見えるようにしています」と阿部さんは説明する。

玄関で靴を脱ぎ、少し進んだ場所は手洗いコーナーで、その向かいにはトイレがある。

玄関と手洗いスペースの間に設けられた袖壁は、トイレの入口や手洗い器を目隠しするように立っており、2つの袖壁に挟まれた空間はパイプスペースやコート掛けとしての役割も担っている。

トイレはグレーのクロスで仕上げられたシックな空間で、天井から吊り下げられたソケットランプがアクセント。小物を飾れる窓辺のライニングやスリムな手洗い器など、機能とデザインがバランスよくまとまっている。

トイレ前のコーナーから見えるのがこちら。

直角に曲がった廊下の先には、カフェを彷彿させる大きなガラス窓付きのドア。その途中の廊下には大きな引き違い窓からたっぷりと光が注いでいる。

 

開放的な寝室は便利な洗面スペース付き

動線を短かくするために、玄関とLDKを近距離に配置する考え方がある。しかし、Tさん夫婦が重視したのはその逆で、奥まった場所にあるLDKまでの道のりを楽しむことにあった。

廊下の奥に見えるLDKは、外との物理的な距離だけでなく、心理的な距離も確保されているのが特徴だ。

廊下の途中の右手には幅約1.8mの大きな造作建具があり、この中の8畳の空間が、ご主人が希望した寝室。

天井まで高さがある上吊り引き戸を開放すると、寝室と廊下が一体につながる。

「阿部とプランを相談する中で、寝室をただ寝るためだけの空間にするのではなく、大きな建具を開くことで廊下とつながるようにしたら面白いんじゃないかという話になり、このような開放的なつくりを提案させて頂きました」と樋宮さん。

その思わく通り、建具を開け放てば、寝室から中庭まで視線が抜けてとても広く感じられる。

「この建具は開けていることが多いですね。寝る時も開け放しにしています。中庭から朝の光が入ってきますし、風も通り抜けて気持ちいいですよ」とご主人。

壁側には作業用の造作カウンターがあり、ここでちょっとしたパソコン作業ができる。手洗い器が付いているので、寝る前の歯みがきをするのにも便利だという。

タモ材のカウンターと黒いスチールの組み合わせは、洗練されたカフェのインテリアのようでもあり、店舗デザインも手掛けるモリタ装芸の得意分野だ。

 

モールテックスと木が融合するダイニング&キッチン

再び廊下に戻り、リビングのドアを開けると、そこは居心地のいいダイニング。

「ダイニングテーブルは実家からもらってきたもので、S.H.S長岡店で買ったクラッシュゲートの椅子を合わせています」(奥様)。

その奥のキッチンの腰壁はコンクリートのような質感のモールテックス仕上げ。奥の収納の扉は下足入れと同じ通気性のいいルーバードアを、カップボードは取っ手のないプッシュオープン機構を採り入れるなど、細かなデザインや使い勝手がよく考えられている。

調理家電やゴミ箱はモノトーンで統一。最も目立つ冷蔵庫は、ミニマルなデザインで定評があるAQUAのTZシリーズを選んでおり、あえて隠す必要がないくらい空間に溶け込んでいる。

ご主人が好きな沖縄の焼き物“やちむん”も、すっきりとした空間に心地よさそうに並んでいる。

 

観葉植物が生き生きと育つ、光あふれるリビング

キッチンの前にはダイニング、その奥には中庭側からの光があふれる気持ちいいリビングがある。

東側にある大きな掃き出し窓の上には、さらに高さ90cmのFIX窓が設けられており、外からの光が白い天井に反射しながら空間全体を包み込む。

リビングに調和するソファは、オークのフレームが美しいクラッシュゲートのアルネ。その後ろの白い壁にはアートやドライフラワーが、テレビの周りにはたくさんの観葉植物がずらりと並んでいる。

「サンスベリアやフィカスウンベラータ、グリーンネックレスやコウモリラン、ハシラサボテンなどがあります。最初は2つくらいを育てていたんですが、だんだんと増えていきました。このリビングは日当たりがいいですし、窓を開ければ風もよく通る植物が育ちやすい環境です。中庭にすぐ出られるので、水やりもスムーズですね」(ご主人)。

3方を囲まれた中庭の広さは10畳程。「通りからの視線が届かないので、ブラインドはいつも開けたまま。とても開放的に暮らせています」(奥様)。

 

海外のホテルを彷彿させる洗面スペースを実現

ダイニング横の階段を上がると、水回り・ウォークインクローゼット・子ども部屋が配された2階がある。

北側のFIX窓から安定した光が注ぐホールが中央に、その東側には4畳の広い洗面脱衣室がある。

モノトーンを基調とした空間の中央には、浮遊感のある造作洗面台と大きな鏡。ガス管を使ったハンガーパイプやスポットライトの黒が空間を引き締める。

「海外のホテルのような空間にしたくて、ピンタレストで見つけた写真を阿部さんに共有し造って頂きました。洗面台はアイロンがけもできるように天板を広めにしています。家づくりの打ち合わせを始めたのが、新婚旅行でヨーロッパに行った後でしたので、現地で宿泊したホテルのデザインも参考にしました」とご主人。

浴室の窓からも光が注ぐ空間は、照明を点けなくても明るく爽やかで気持ちいい。

ここで乾かした洗濯物は、同じ2階にあるウォークインクローゼットへ。

約3畳のウォークインクローゼットには、コの字型にハンガーパイプが取り付けられており、たっぷりと収納できる。

プラスチック素材の収納ケースではなくラタン素材のキャビネットを、プラスチックハンガーではなくIKEAの木製ハンガーを。クローゼットの中をきれいに整える暮らしぶりからも、住まいへの深い愛情が感じられる。

ホールの西側の部屋は将来的に2部屋に仕切れる子ども部屋。

今は来客の宿泊用に使っているのだそう。

 

絵を飾り、料理を楽しむ豊かな休日

2020年の秋に完成してから間もなく丸3年。住んでみての感想を伺った。

「以前は、休日は買い物に出掛けたり飲みに行ったりすることが多かったですが、この家の居心地が良くて家に居る時間が好きになりました。料理をするのも楽しくなり、外食に行く回数も減りましたね。あと、細かいところなんですけど、巾木が小さいのが気に入っています(笑)」(ご主人)。

「樋宮さんと阿部さんが、私たちのイメージや好みを理解して提案してくださったので、迷うことなくスムーズに打ち合わせを進めることができました。家を建てた後に『ああすれば良かった…』と聞くことがありますが、私たちの場合はそういうのが一切ありません。本当に感謝しています。それから、この家に住んでから絵を買って飾るのも楽しみになりました」(奥様)。

「最初はご要望がたくさんあり、入れるべき要素も多かったですが、うまく解決しながら素敵な家に仕上げられました」と樋宮さん。「私たちの提案を受け入れて頂けたこと、お任せ頂けたこともありがたかったですね」と阿部さん。

約50坪の土地に立つ、中庭を望むコの字型の住まい。プライバシーをしっかりと確保しながらも、家の中にはいつも心地いい光があふれ、風が流れていく。

この家で過ごす何気ない日常。それは、Tさん家族が心からリラックスできる大切な時間になっている。

 

T邸
長岡市
延床面積 102.68㎡(31.00坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2020年11月

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平