※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。
42坪の土地にぴったりはまる、ROMO32坪タイプ
今回訪問したのは、新潟市中央区に住むNさん家族の家。
N邸は2021年12月に完成した定額制注文住宅『ROMO(ロモ)』の32坪タイプで、4間×4間の正方形の平面を持っている。
『ROMO』には30坪・32坪・35坪・38坪・40坪の5つの2階建てタイプと、5つの平屋タイプがあり、それぞれ建物の基本価格が決まっている。
また、建物の外形は規格化されているものの、内部の間取りや内装、造作家具などを自由につくれるのも特徴だ。
N邸が立っているのは42坪の北向きの土地で、手前は3台分の駐車スペース。その奥に黒いガルバリウム鋼板で覆われたシンプルな建物が佇んでいる。
Nさん家族はご夫婦と3歳の娘さんの3人家族。奥様は妊娠中で翌月には2人目のお子さんが誕生予定だという。
「娘が成長してくると以前住んでいたアパートが手狭になり、戸建てに住みたいと思うようになりました。建売住宅という選択肢もありましたが、せっかくなら自分たちに合った家をつくれる注文住宅にしたいと思ったんです」(ご主人)。
家づくりに関する知識を増やすために、住宅展示場やオープンハウスをいくつも訪れたというNさん夫婦。その後に、住宅相談サービスの『住まいNET新潟ラウンジ』を訪れ、モリタ装芸といくつかの会社を紹介してもらった。
「注文住宅といっても会社によって得意としていることが随分違うことが分かってきました。モリタ装芸さんは造作家具を得意としていて、それによって室内の居住性を高めたり、収納を確保するのがうまいと思いましたね。はじめに担当の長谷川さんと設計の阿南さんに会ったんですが、お二人の信頼できる人柄が決め手となり家づくりをお願いすることにしたんです」とご主人。
十分な収納量を確保した機能的な玄関
さて、そんなN邸。一体どんな空間が広がっているのだろうか?さっそく中を見せて頂いた。
ドアを開けると、そこは空間をきゅっとコンパクトにまとめた玄関&ホール。
手前の1畳分が玄関土間で、奥の1畳分が玄関ホールになっている。
ホール側には姿見付きの800mm幅の下足入れがあり、土間側にはカウンターと可動棚。
ほとんどの靴は下足入れにしまい、長靴は可動棚の下にきれいに収めている。
カウンター下に金属のバーを取り付け傘掛けにするなど、わずかなスペースもアイデアと工夫で使い勝手よくつくり込まれているのが特徴だ。
「僕たちは靴マニアではないので下足入れはこれくらいあれば十分なんですよ」とご主人。必要以上に靴を買わないため、玄関が靴であふれることはないという。
玄関とリビングの間に設けられている透明ガラス入りの引き戸もおしゃれなアクセント。
「三条市の石上モデルハウスでこのタイプの建具を見て、それを入れたいと思いました」(ご主人)。天井まで高さがある建具はガラス面も大きく、室内を広く見せるのに役立っている。
また、万が一ぶつかった時の安全性も考え、飛散防止フィルムが張られているという。
玄関ホールの先は視線が通る開放的な廊下
この建具の先はリビングと一体につくられた廊下。
リビング側は高さ1.2m程の壁で曖昧に区切られており、奥にはキッチンが見える。
階段は1階と2階を結ぶ動線であると同時に、2階の高窓から採り込んだ光を1階へ届けるのにも役立っているようだ。
キッチン手前を右に曲がった場所は、1坪の洗面脱衣室。
すっきりとしたデザインの洗面台は造作で、洗面ボウルが一体になったアイカ工業製のカウンターと、突板仕上げのキャビネットが品よくまとまっている。
化粧品やシェーバーなどのこまごまとした物は右手のニッチに収納できるほか、使用頻度の高いものはミラー手前のステンレスカウンターに並べておける。
ニッチ内にはシェーバーの充電をするためのコンセントが備えられていたり、細部も抜かりない。
ゆったりとした造作ソファで過ごす癒やし時間
先程の玄関をちょうど対角から見たのがこちら。
L字型のLDKは、立ち上がれば玄関まで視線が抜けるため、図面上で見るよりも広がりが感じられる。
リビングに設けられたL字型の造作ソファもご主人のこだわりで、モリタ装芸のモデルハウスで見た造作ソファに一瞬で惚れ込み採用を決めたという。
座面は少し低めにつくられており、床に近い分、落ち着いた雰囲気を感じさせる。
奥行は90cmと深めで、座面の上であぐらをかいて座ったり、ごろりと横になって昼寝をしたりするのにもちょうどいい。
この造作ソファに合わせてTVボードも少し低めにつくられている。
また「どこにいてもスマホを充電できるようにしたい」というご主人の希望から、この家ではコンセントの数が多めに設けられているが、ソファでくつろぎながら充電ができるように、肘置きの中にもコンセントが備えられている。
充電器と繋がっていると安心する感覚。これはスマホが手放せない多くの人が共感する部分だと思われるが、きめ細かなコンセントの計画ができるのも自由設計ならではだ。
モリタ装芸の家具技術が活きるダイニング・キッチン
ダイニング・キッチンは、ダクトレールに取り付けられたスポットライトやペンダントライトが彩る空間。
ダイニングがあるのは南側ではあるが、すぐ隣に隣家が立っているため、窓はプライバシーを考慮した大きさにしている。
オーク材の床と合わせて、同じオーク材でつくられたダイニングテーブルはモリタ装芸のオリジナル家具。
社内に家具工房を持っているモリタ装芸は、造作家具だけでなく、このようなテーブルなどの置き家具の制作も手掛けている。
幅1,600mm×奥行850mmのテーブルはちょうどいい大きさで、天板は水に強いメラミン樹脂仕上げ。
「冷たい飲み物が入ったコップを置いても、メラミンの天板であれば輪染みができることもありません」と、設計の阿南さんは話す。
ダイニングの後ろは可動棚になっており、こちらは娘さんのおもちゃスペースとして活用中。棚には絵本の他にラベリングした整理ボックスが並んでおり、おもちゃが片付けやすくなるように工夫している。
その隣にあるキッチンは、奥様が「ここだけは私の好きなようにさせてもらいました」と話すこだわりの空間。
キッチン本体はタカラスタンダード製で、手入れのしやすいホーロー素材とマットな黒色が気に入って選んだという。
その背面には幅1,800mmの造作カップボード。
「私が背が低いので物を取り出しにくい吊り戸棚は付けず、ディスプレーできる飾り棚だけを付けて頂きました」(奥様)。
下部のキャビネットは、左側にゴミ箱を3つ並べられるスペースを設け、右には食器やグラスのサイズに合わせて深さを決めたという引き出し収納が付いている。取っ手を付けないことですっきりしたデザインに仕上がった。
引き籠もらず、家族との時間を過ごせる書斎
一方、ご主人が最もこだわった場所の一つがリビング隣に設けられた書斎だ。
奥行1,365mm×幅2,275mmというサイズは1畳(910mm×1,820mm)に各辺455mmを足した寸法で、書斎の作業性と収納を確保しながらリビングを必要以上に圧迫しない絶妙なバランスとなっている。
入って右手は棚。プリンタやご主人の趣味のカメラ&レンズ、ゲーム機、さまざまなガジェット類が並ぶ。
左手は造作デスクで、デスクの上にはLGのウルトラワイドモニターが。
「ここで写真や動画の編集作業をすることが多いですが、2つのソフトを同時に開いて作業ができるので使い勝手がいいですね」とご主人。
編集作業をしない時でも家に居る時間の多くをこの書斎で過ごしているという。
「はじめは2階に書斎を配置しようと思っていたんですが、そうすると僕だけがずっと2階に引き籠もることになりそうだったのでこの場所にしました。ここに居ればリビングに居る家族とお互いの気配が感じられます。あと、すぐ隣にリビングのテレビがあるんですが、ここで娘と一緒にYouTubeを見たりもしますね。ロールスクリーンは付けていますが、閉じることはありません」(ご主人)。
書斎とは、誰にも邪魔されない静謐な時間に浸りながら、自分の好きな作業に没頭したり、思索に耽る場所…というイメージがあったが、N邸の書斎はそれとは違う。
リビングの一角に設けられた書斎は、“スタディーコーナー以上、個室未満”の言わば書斎ブースなのである。
個人的な趣味の時間と、家族と過ごす時間。その二つを二者択一にするのではなく、同じ空間で両方の時間を過ごせる書斎のスタイルとなっている。
目指したのは、家族みんなが楽しく過ごせる場所
「僕は持ち物が多い人間で、『収納を多めにして欲しい』というのも打ち合わせで長谷川さんと阿南さんに伝えていました。ただ、なるべく空間を犠牲にしたくなくて。そんな要望を阿南さんに形にして頂いたんです」とご主人。
「玄関の近くにファミリークロークを設けたり、他にもいろいろなところに収納スペースを確保しましたが、なるべく視線の抜けをつくることで広がりを感じられるようにしています。また、どんな持ち物があるかをヒアリングした上で棚などの寸法を決めていきましたね」と阿南さん。
さまざまな要望に応えながらも、阿南さんは「家族みんなで楽しく暮らせること」を願って設計したという。
多くの要素が詰め込まれたN邸のLDKは、一見すると複雑に見える。しかし、視点を引いて見ればそこは大らかなワンルーム。
家族それぞれが好きなことに没頭しながらも、実はいつも一緒の場所に集まって過ごす幸せな家族の姿がある。それが他ならない阿南さんの狙いだ。
さまざまな伏線を散りばめながら、それらを全て回収し、最後には心地いい余韻を残す。
そんな映画のような空間がここにある。
N邸
新潟市中央区
延床面積 102.68㎡(31.06坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2021年12月
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平