【自由設計】緻密な収納計画でモノがすっきり片付く暮らし

※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。

造作家具と木の使い方に惹かれた

「仕事柄転勤が多く、結婚してからこれまで静岡や長野、金沢に住んできました。今は単身赴任で東京で働いています。リモートワークで1週間~1カ月くらいこっちにいる時もありますが、基本的に平日は東京にいます」と話すご主人。

数年ごとに引っ越しを繰り返してきた転勤族であるが、長男が転校することなく学校生活を送れるように、小学校に上がる前に家を建てようと計画を始めた。

2021年に完成した住まいが立つのは奥様の実家のすぐ目の前の土地で、元は奥様のお父様が所有していた畑だったという。

「S.H.S鳥屋野店にある住まいネットラウンジさんに相談に行き、4社をご紹介いただきました。全部の会社にお話を聞きに行き完成見学会も見させて頂きましたが、モリタ装芸さんが最も自分たちのイメージに合っていましたね。手描きの平面図もすごくおしゃれでしたし。大手ハウスメーカーさんが集まる総合住宅展示場にも行きましたが、そちらは私たちのイメージとは違いました」と奥様。

「それから、モリタ装芸さんは造作家具がどの家も素敵で、見学会に行くたびに『こうしたい!』というイメージが湧いてきました」と続けた。

「僕も木の使い方がいいなあと思ってモリタ装芸さんに惹かれていきました」とご主人。

家づくりで希望したことを伺うと、「僕たちがこだわったのは、シンプルですっきりとした空間です。そのためにも収納は多く設けたいと思っていました。あとは開放感や抜け感を希望しました」とご主人。

「私は片付けがあまり上手じゃないので、例えば書類などの散らかりがちな物を隠して入れられる収納があるといいなと思っていました。それからパントリーは絶対に付けたかったですし、靴が多いので玄関にはたくさん収納できる棚が欲しいと思っていました」(奥様)。

設計の須田達則さんは、そんなKさん夫婦の希望をヒアリングし、敷地条件を読み取りながらプランを検討していった。

 

壁面も無駄なく使った合理的な玄関収納

白いガルバリウム鋼板で覆われた建物はすっきりとシンプルなデザイン。

1坪のポーチは雨が降っていても慌てずに出入りができるゆとりがある。

コーナーの鉄柱や玄関のスクエア窓、天井の高さと合わせた玄関ドアなど、細かな寸法や素材選びに美意識が現れており、ギャラリーのような凛とした雰囲気を感じさせる。

玄関はL字型の土間があり、壁で目隠しされた奥側の2.6畳が収納スペースになっている。

奥の壁側一面に可動棚が設けられ、靴の他にアウトドア道具や釣り道具など、家の中には持ち込みたくない外遊び用の物も収納。土間には自転車を保管できるゆとりもある。

また、中央の壁の裏手には有孔ボードを張り、帽子やカバン、エコバッグなどを省スペースで収納できるようにしている。

「アパートではカバンなどをリビングに置きっぱなしにしていましたが、玄関に収納できるようになったのでリビングが散らかりにくくなりましたね」(奥様)。

玄関ホールには手洗い器付きのカウンター。

オークの面材が張られた引き戸やメラミン樹脂の天板を組み合わせた、オーダーメードの造作家具だ。

「玄関に飾り棚が欲しいなと思っていて、このようなカウンターを造って頂きました。花を飾ったり、五月人形や子どもの作品を置いたりして楽しんでいます」(奥様)。

手洗い器は帰宅後すぐに手を洗えるように設置したもので、すぐそばにあるトイレの手洗いも兼ねている。

ちなみにトイレ内にもカウンターと収納が造作されており、そこには小さな花がちょこんと飾られている。

 

雨の日でも明るく心地いいリビング

大きなガラスが入ったオーダー建具の先がK邸の中心であるLDK。

南東側は高さ2,200mmの窓が連続し、ここからたっぷりと光が注ぐ。反対の北西側にはシャープなスチール階段が伸びており、2階や地窓から穏やかな光が入ってくる。

さらにキッチンの奥のパントリーには高さ1,800mmのFIX窓もある。南東側だけでなくさまざまな場所から光が入るため、雨の日でも自然光だけで心地よく過ごすことができる。

テレビは壁掛け式にしてすっきりと。レコーダーなどを置くスペースは壁の中に埋め込んでおり、玄関側の造作収納の戸を開けて配線ができる。

「なるべく家具を置きたくなかった」という奥様の要望から生まれたデザインだ。

「それから、2階の廊下のスノコも須田さんからの提案でしたが、これにして頂いてよかったです。晴れた日にここから差す光がとてもきれいなんですよ」(奥様)。

南東面の中央の柱の左側は6尺(約1.8m)幅のFIX窓、右側は9尺(約2.7m)幅の引き違い窓でここからウッドデッキと庭が眺められる。

「開けるところが限られた敷地の中で、プライバシーを確保しながら最も採光を得られるのがここでした。建物をL字にし、通りとの間にカーポートを挟むことで中庭のような落ち着き感をつくり出しています」と須田さんは説明する。

また、2階部分を3尺分オーバーハングさせることで雨や直射日光を遮るようにしているのもポイントだ。

デッキの素材は頑丈で水に強いセランガンバツ材。オーダーメードのハンガーバーは錆びにくい溶融亜鉛メッキ仕上げで、その無骨な表情もいい。

「ウッドデッキではバーベキューをしたり、お昼ごはんを食べたり、水遊びをしたり。布団を干す場所としても重宝しています」(奥様)。

 

デザインも機能も妥協しないキッチン収納

家づくりでKさん夫婦が重視していた収納。LDKにおいては、奥にあるキッチン周りに集約されている。

収納量だけでなく動きやすさや美しさも考えた上で計画したのが、回遊できるパントリー、Ⅱ型キッチン、造作カップボードを組み合わせたレイアウト。

「ダイニングテーブルとキッチンを横並びにするレイアウトをご希望されていましたが、行き止まりにすると水回りへのアクセスが悪くなります。そこで、パントリーを通ってキッチンの周りを回遊できるようにしました」と須田さん。

造作カップボードはキッチンと合わせて幅約4.5mと長めにしており、調理家電をずらりと並べても余裕がある。

キッチンとカップボードが一体に見えるが、実はキッチンは既製品。面材だけ造作カップボードと同じオーク材にすることで統一感を生み出している。

このように既製品のキッチンを造作キッチンのようにカスタマイズするのもモリタ装芸の得意技。

ちなみにダイニングテーブルもモリタ装芸のオリジナル家具だ。

パントリー内には食品ストックだけでなく冷蔵庫もすっきりと隠されており、FIX窓から光も採り込める。

「ダイニングテーブルのすぐ後ろに収納があるので、椅子に座りながら振り返って物を取り出せるのもいいですね。あと、ダイニングテーブルがキッチンと横並びなので、買ってきた花を広げたり切ったりするのに便利です」(奥様)。

 

造作洗面台にスロップシンク、ランドリールームを兼ねた脱衣室も

キッチンの正面奥は水回りゾーン。

造作洗面台はアイカ工業製の洗面ボウルを組み合わせたもの。

その後ろにはスロップシンクがあり、その先には物干し・収納を兼ねた3.5畳の脱衣室が続く。

「私は柔軟剤のにおいを感じながら洗濯物を干す時間が好きで、ガス衣類乾燥機は入れませんでした」(奥様)。

「僕は洗濯物をたたむのが好きなんですが、造作の台が便利ですね。お風呂に入る時に着替えを置いておくのにも重宝しています」(ご主人)。

細かい所だが、物干しポールを吊るハンガーはすっきりとしたデザインが特徴的なカワジュンのSC-509-S50を採用。小さな建築パーツにもこだわりが感じられる。

 

2階には集中できるテレワーク用の書斎も

一度リビングに戻り、スチール階段を上がって2階へと向かった。

2階の階段横に伸びる廊下はすのこ状で、橋を渡るような面白さがある。

その先にあるのはご主人の書斎。中に入るとウォークインクローゼットとつながっている。

「家でのテレワークはここでしています。1.5畳の空間ですがパソコン1台あれば作業ができるのでちょうどいいですね」(ご主人)。

4畳のウォークインクローゼットはゆとりがあり、寝室と天井付近で繋がっているため、光や空気が回りやすい。

その隣はシンプルな6畳の寝室。勾配天井のおかげで一般的な6畳間よりも広く感じられる。

そして、先程のすのこの廊下を戻った先には、将来的に2室に分けられる9畳の子ども部屋がある。

左右対称の子ども部屋の窓辺には造作のカウンターがあり、デスクとして使える。

 

収納が名脇役として快適な暮らしを支える

オーク材の床と白い壁紙がバランスよく溶け合うK邸は、シンプルでありながら温かみにあふれている。

収納が多い家を目指すと、収納を優先するあまりにその存在感が際立ち、居住性を損なうことも少なくない。

その点、K邸は広く明るいリビングを確保した上で、決して収納が目立ってこないように注意深く計画されている。

居住空間と調和し、脇役に徹しながらも使い勝手がいいK邸の収納の数々。それらが「シンプルですっきりした空間で暮らしたい」というKさん夫婦の願いを叶えてくれている。

 

K邸
加茂市
延床面積 111.65㎡(33.77坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2021年12月

取材・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平