※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。
田んぼを見渡す分譲地で家づくり
三条市内の分譲地を購入し、新築をしたMさん夫婦。
52坪の土地の東側には見渡す限りの田んぼが広がっており、その先には雪化粧をした粟ヶ岳がそびえ立っている。
季節の変化をダイナミックに感じられる景色を、1階のダイニングや2階の子ども部屋から眺められるのがこの家の魅力だ。
2020年の3月に結婚したMさん夫婦が家づくり計画を始めたのは同年の秋。当時は燕市内のアパートに住んでいたという。
「その年の8月に燕市内の総合住宅展示場に行ったんですよ。その時はまだ家を建てようと真剣に考えていたわけではなく、イベントに遊びに行く感覚でした」とご主人。
しかし、その展示場の見学を機に、真剣に家を建てようと考え始めたMさん夫婦は、さらに住宅の見学を進めていった。
「その年の秋には、三条市須頃でモリタ装芸さんをはじめとした県内の住宅会社が集まる住宅イベントに行ってみました。そちらの方が僕たちの好みの家が多かったですね。それからいくつかの会社に候補を絞っていきました」(ご主人)。
「私は最初にモリタ装芸さんのモデルハウスを見た時から雰囲気が好みで、こんな家に住みたいなと思いました。相談の段階で、夫が性能面、私がデザイン面で細かいこだわりが多かったと思うのですが、モリタ装芸の須田さんは『できると思います』という前向きな発言が他社さんよりも多く頼もしいと思いました」と奥様。
ミニマルなデザインでまとめられた玄関周り
北側と西側の2面が道路という角地で、正面(西面)から見る外観はグレーのガルバリウム鋼板で仕上げられたシンプルなデザインとなっている。
車はカーポートに2台とポーチ前に1台、最大3台の駐車スペースを確保。
ポーチの壁だけはざらりとした質感の塗り壁で仕上げ、変化を付けている。
ドアを開けたその先は、シューズクロークを含めた3畳の玄関。
左手は下足入れで、奥は可動棚付きのシューズクローク。ロードバイクを置ける余裕もある。
大きなFIX窓はプライバシーに配慮したすりガラスを採用。玄関全体が柔らかい光で満たされているのは、外からの光がこの白いガラスによって拡散されるからだ。
玄関を上がって左側に進むと手洗いスペースがある。
コンパクトなスペースに収まっているのはサンワカンパニーのシンプルな洗面台。スイッチやタオル掛け、小さめの鏡などもミニマルなデザインですっきりとまとめられている。
その後ろはトイレ。
こちらもシンプルなモノトーンで統一されており、ペンダントライトが温かい光を放つ。壁のニッチは予備のトイレットペーパーを置くのにちょうどいい高さで、シンプルなデザインの中に便利な機能が隠されている。
以上が玄関周りの空間だ。
グレーチング天井が伸びるLDK
玄関ホールからLDKへと繋がる動線は、トイレや手洗いスペースとは逆の玄関ホール右手。
天井まで高さがあるガラス引き戸「YKKAP・ファミット」を開けると、正面に見えるのがこちら。
天井の半透明の格子から緑色の光がこぼれる印象的な空間が奥へと伸びる。
この格子はFRP素材のグレーチングと呼ばれるもので、2階の廊下の床を兼ねている。
「最初に伝えていたたくさんの要望の中に『吹き抜け』がありました。モリタ装芸さんの本社のモデルハウスを見ていいなと思っていて。でも吹き抜けを設けることで床面積が小さくなるのもちょっと…とも思っていたところ、このグレーチングをご提案頂いたんです」と奥様。
「Mさんご夫婦のリスト化された要望を見て、一つ一つ『なぜ欲しいんですか?』という質問をしていきました。そうすると、吹き抜けの場合でしたら、本当に欲しいものは『開放感』だということが分かりました。そこで、日常の動線の中でもお部屋の開放感を得られる提案をさせて頂きました。一つ一つの要望を突き詰めていくと見えてくるものがあり、さらには家全体のテーマもはっきりしてきてプランがまとまりやすくなります」と須田さんは説明する。
グレーチングは光だけでなく空気も通すため、家全体を冷暖房するのにも効果的だ。
日中は2階の窓から入った光が1階に注ぎ、夜になると2階の照明がグレーチングを通して一層印象的な光と影をつくり出す。その夜の雰囲気も奥様のお気に入りだという。
こだわりの椅子が並ぶダイニング
LDKに入ったところから右手に広がるのがリビングとダイニング。床はバーチの一種である西南桜で、少し赤みがかっているのが特徴だ。バーチのような爽やかさがありながら、少し重厚感もある。
すっきりとしたきれいな空間の秘密は、照明やスイッチ、コンセント等が目立たないように控えめに配置されていることにある。
「壁や天井がすっきりしていると、空間全体が広く感じられるように思います。一つ一つお部屋の表面に取り付くものを整理して、特に照明は居心地の良さを左右する大事な要素なので、実用性と美観も考えてM様と一緒に計画しました」と須田さん。
「提案して頂いた際は少し照明が少なくないかな?とも思っていたんですが、住んでみたらちょうどいいですね。今思えばアパートの白い照明は明るすぎたと思います」(奥様)。
「夜はダウンライトを電球色にして過ごしています。今では友達の家に遊びに行った時に、ダウンライトが多く感じるようになりましたね」(ご主人)。
ダイニングの円テーブルの周りには、Mさん夫婦がいくつものインテリアショップを巡って吟味した椅子が並んでいる。
「はじめは椅子やテーブルにこだわりがなかったので、普通のダイニングセットを買おうと思っていたんですよ。でも須田さんから椅子の重要性を聞いているうちにちゃんと選んで買おうと思うようになり、インテリアショップで何時間も過ごしながら選んでいきました」(ご主人)。
そうして選ばれたのが、カイ・クリスチャンセンのNo.42、ヨルゲン・ガメルゴーのクレストレイルチェア、井上昇のAwaza(アワザ)だ。
「時間を掛けて選んだ椅子は愛着があるお気に入りです。何時間座っていても疲れません」と奥様は話す。
「家で過ごす時間の多くを人は座って過ごしますので、家具の中でも椅子は最も身近で重要な存在だと思います。Mさん夫婦のようにそれぞれが自分に合う椅子を選んで並べても面白いですよね」(須田さん)
プライバシーが確保されたウッドデッキも
ダイニングの掃き出し窓の外に広がるウッドデッキはご主人が希望したスペース。
「実家暮らしの時も庭で一人でバーベキューをするくらいアウトドアが好き。庭とデッキは絶対に欲しいと思っていました」とご主人。
「庭を計画する場合、プライバシーを保てることが大事になります。角地で外から見られやすい土地でしたので、建物をL字にすることで北側道路からの視線を遮り、日当たりと景色の両方を得られるようにしました」と須田さんは説明する。
「夏にはデッキで妻と実家の母と3人でバーベキューをしましたね。燻製を作ったりもしました。東向きのデッキなので、午後になると日陰になり、夏でも過ごしやすかったです。休日の朝にデッキでコーヒーを飲む時間も好きですね」(ご主人)。
ダイニングの奥はソファスペースで、ここはゆっくりとテレビや映画、ゲームなどを楽しむ場所。
折り上げ天井にして梁を現すなど、ちょっとした変化を付けている。
また、造作のTVボードはご主人の希望で、ゲーム機の排熱用スリットを設けるなど、細かい部分までオーダーメードされている。
キッチンを中心とした便利な生活動線
リビング・ダイニングを見渡すキッチンはフラットなペニンシュラ型。壁のないキッチンは空間を広く感じさせる。
「キッチンの天板が広く、料理を並べやすいのがいいですね。カップボードははじめはメーカー既製品にしようと考えていましたが、他の素材とのバランスを考えて造作して頂きました。飾り棚を付けて頂いたのも良かったです」(奥様)。
また、キッチンの奥に進むと収納スペースがあり、ぐるりと一周できる回遊動線もつくられている。
財布やバッグ、腕時計やアクセサリー、その他にも日常使いする服や道具をこの空間にまとめたことで、朝出掛ける時の動きがスムーズになっているという。
ニッチに設けられた有孔ボードには、サングラスや車のキー、奥様自作のアクセサリーなど、さまざまなものがすっきりと収納されている。
そして、そのすぐそばにはモリタ装芸が得意とする造作洗面台がある。
「アパートの洗面台が狭くて使いにくかったので広めの洗面台を希望しました。ニッチの収納や1枚の大きな鏡などのイメージを描き、細かな希望を伝えて造って頂いたんです。ちなみに住宅会社さんによっては造作家具の希望を細かく伝えようとすると『それはちょっと…』という空気になることがありました。このようなオーダーメードの造作家具を叶えてくれるのもモリタ装芸さんの強みだと思います」(奥様)。
その他にも、キッチンの前のパソコンスペースや、
独立した脱衣室など、機能的なスペースがバランスよくまとめられている。
寝室へと続くグレーチングの床
リビング階段を上がると、2階の中央をまっすぐ伸びるグレーチングの床が目に飛び込んでくる。
グレーチングの廊下の途中にはウォークインクローゼットとトイレ、
突き当たりには7畳の寝室がある。
あえてクローゼットとも繋がらない行き止まりの部屋にすることで、寝ることに集中できる空間に仕上がっている。
寝室以外の部屋としては、将来的に2室に分けられるフリースペースが設けられており、ここからは1階のダイニング以上に開放的な眺めを楽しむことができる。
予定のない休日も規則正しく起きる朝
「最初に作って頂いた間取りを見て、大きく直してほしいと思う部分がほぼなかったんです。私たちの要望がぎゅっと詰まっていて、『この家に住んでみたい!きっと素敵な家になる』とワクワクし、モリタ装芸さんに決めました。社員の方とフランクに話し合える雰囲気も私たちに合っていて、楽しく家づくりができました」と奥様は振り返る。
アパート暮らしの時は、予定のない休日の朝はベッドでゆっくりすることが多かったそうだが、今は早く起きてダイニングで過ごしているという。「午前中の気持ちいい時間をダイニングで過ごさないともったいなくて。とにかく居心地がいいんです。お気に入りの椅子に座って、窓の外を眺めながらゆっくりコーヒーを飲める。家で過ごす時間がご褒美になっています」と奥様。
雄大な田園風景を望む心地いい住まいは、生活のリズムを整える力も持っている。
M邸
三条市
延床面積 110.76㎡(33.44坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年4月
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平