※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。
モリタ装芸の家に出合い、家づくり欲が高まる
今年の2月に完成したKさん家族が住む家は、ご主人の実家の敷地内に立っている。
「以前は近くのアパートで家族4人で暮らしていて、3年程前に家づくりをしようと考え始めました」とご主人。
元々は土地を購入して別な場所で家を建てる予定だったが、ご主人のご両親の意向もあり、実家の敷地内にあった車庫を解体してそこに家を建てることにしたという。
「はじめにいくつかの住宅会社さんの見学会やモデルハウスを見に行ったりしたんですが、特に強く惹かれるものがなくて。そもそも僕たちは家に対してのこだわりがなく、建売住宅も検討していたんですよ。でも、モリタ装芸さんの見学会に行ってから考え方が変わりました。他の会社の住宅はメーカー既製品の組み合わせが多かったですが、モリタ装芸さんはひとつひとつ造作しているんです。巾木などの見切り材ひとつとってもこだわりがあり、全体のまとまり感が違いました。そういう家づくりがあることを知り、『せっかく建てるならこだわりたい』と、初めて欲が湧いてきたんです」(ご主人)。
当初は定額制注文住宅ROMOで考えていたが、土地の大きさの都合から、外寸が規格化されたROMOではうまくはまらないことが分かったという。
さらに車1台分のインナーガレージも要望に盛り込んでいたことから、細かな融通が利く自由設計で進めることにした。
愛車を守るガレージをビルトイン
外観は片流れ屋根ですっきりシンプルにまとまっているが、車の出入りのしやすさや、交通量が多い道路や実家のアプローチとの距離をどう取るかという点で、とても合理的な計画になっている。
例えばガレージやポーチ周り。
道路側にインナーガレージを配することで車の出入りをしやすくするのはもちろん、この空間自体が分厚い壁のような役割を果たすことで、奥の居住空間が落ち着ける場になっている。
また、2階の一部を迫り出すことによって玄関前に広い軒下空間をつくり出しており、屋外に止めた車の助手席側からはほとんど雨に当たらずに乗り降りができる。
ガレージ内に止められているバイクは「Ninja ZX25R」。
「昔スポーツタイプのバイクに乗っていたんですが、今年久しぶりにバイクを購入しました。250ccなので車検もないですし、バイクは車と比べると経済的に楽しめる趣味ですね。ゆくゆくは一人でキャンプをしながらツーリングに出掛けたいです」とご主人。
大切な愛車を雨風にさらすことなく保管でき、室内からスムーズにアクセスできるのがインナーガレージのメリットだ。
シューズクロークや寝室はキュッとコンパクトに
玄関ドアを開けると、正面にはまっすぐ奥へと廊下が伸びている。
すぐ目の前の壁にはウォールナットの板が目を引くニッチ。ニシンの骨を意味する「ヘリンボーン」と呼ばれる張り方がアクセントになっている。
玄関の左手はシューズクロークと寝室。
シューズクロークは1畳弱の小さな空間だが、壁一面に可動棚が取り付けられており、高い位置まで有効活用できるように考えられている。
4.5畳の寝室は南西角の高い位置に明かり取りの窓が設けられており、朝に直射日光が差し込むことがない。それ故に、朝日が昇るのが早い夏でも穏やかな光の中で朝を迎えることができる。
寝ることだけに集中できるコンパクトな空間だが、枕元には奥行130mmのライニングが配されており、本やティッシュ、スマホなどを置いておくのに都合がいい。便利な場所にコンセントも設けられている。
クローゼット・ランドリー・洗面室が連続
廊下を進んで行くと、左手には細長い3畳のウォークインクローゼットとランドリールームが並んでおり、その先には洗面脱衣室と浴室がある。
3畳といっても畳が3枚並んだ形ではなく、6畳間を長手方向に半分に割った、幅1,365mm×奥行3,640mmという細長い形状だ。
一見中途半端な数字に思えるかもしれないが、下の写真を見ると、これがWICやランドリールームとしては実に絶妙な寸法であることが分かる。
ウォークインクローゼットの左手には、家族4人の服がずらりとハンガーバーに掛けられており、下には整然と収納ケースが並んでいる。右手の壁一面は有孔ボードで、バッグや帽子などは掛けて収納する仕組みだ。シンプルで無駄がなく、ゆとりある通路幅は収納ケースを引き出す際もストレスがない。
ちなみにこのウォークインクローゼット、引き戸を開ければ隣のランドリールーム、洗面脱衣室に繋がる設計だ。
「この間取りは設計をして下さった阿南さんからご提案を頂いたものです。仕事から帰ってきたら最初にウォークインクローゼットで着替え、洗面台で手を洗って2階リビングに向かうという流れになっています。行ったり来たりすることがないのがいいですね」とご主人。
モリタ装芸が得意とする造作洗面台は幅が1.8mもあり、木製天板に実験用シンク、タイルや間接照明など、さまざまな素材や仕掛けが見事に融合している。
「大きな実験用シンクは子どもたちの靴を洗うのにも重宝しています」と奥様。
その後ろの壁にはステンレス製のバーが2つ設けられており、家族4人分のバスタオルが掛けられるようになっている。
洗面脱衣室のお隣はトイレ。
鮮やかなブルーが印象的な薔薇の壁紙はシンコールの「BB9772」で、アーティスティックな趣きがある。
「家全体としてはシンプルなインテリアを希望していましたが、トイレだけは遊びたいと思ったんです。同じ花柄でも、小花や輪郭がしっかり描かれたものではなく、印象派のようなタッチが気に入ってこのクロスを選びました」(奥様)。
ちなみに2階のトイレは色違いの「BB9773」を使用している。
ぱっと視界が開ける高天井の2階リビング
ガレージが床面積の3分の1程度を占める1階は、寝室の他に水回りや収納だけが固められており、LDKや子ども部屋は2階に配されている。
階段を上がり切った正面がダイニング。
その右手にキッチンが連なっている。
一方、リビングは階段の左手にあり、ダイニングと少し距離を取っているのが特徴だ。
「LDKが四角い一つの空間になっているよりも、リビングが少し独立しているのがいい」という奥様の要望や、「LDKを家族が自然と顔を合わせて集まる場所にしたい」というご主人の要望が具現化されている。
リビングは7畳の空間で、目を引くのが幅3.6mの造作ソファ。モリタ装芸ではさまざまな造作家具を自社製作しているが、造作ソファは近年特に人気が高まっているという。
「天野にあったモデルハウスで造作ソファを見て、これは絶対に付けたいと思いました。造作ソファにすると模様替えができないという意見もありますが、僕たちはこのソファがすごく気に入っています。サイドの肘掛けに飲み物を置けますし、その下にコンセントがありスマホやタブレットの充電ができるのもいいですね。幅も奥行もあるので、あぐらをかいたり寝そべったり、幅広い使い方ができます」(ご主人)。
リビング側には車通りの多い道路があるため、窓の位置を高めにしてプライバシーを確保。その一方、コーナー窓にすることで、風景をワイドに切り取っている。1階リビングでは得られない開放感がここにある。
テレビは造作ソファと向かい合うように置かれており、ダイニング側から見えないのも特徴だ。これにより、食事をする時間とテレビを見る時間のメリハリが生まれるし、キッチンの音とテレビの音が混じり合うストレスもない。
機能的かつ温かみあるダイニング・キッチン
リビングの対角に位置するキッチンは、パントリーを含む6畳程の空間。
L字型のキッチンはダイニング側がシンクで、コンロはサイドの壁を向くように設けられている。
この形は、ダイニングで過ごす家族とコミュニケーションが取りやすく、ダイニング側への油跳ねを抑えられるのが特徴で、壁付けキッチンと対面キッチンそれぞれのメリットをうまく取り入れた形とも言える。
冷蔵庫はコンロと横並びで、間に設けられた壁にそっと隠れるように置かれているのも面白い。
パントリーには食品ストックをはじめさまざまなものが置かれているが、ダイニング側から丸見えにならないようにしっかりと袖壁が設けられている。
オークの面材で仕上げられたカップボードは、食器が置かれている場所は中が見えるようにガラス戸が付けられており、それ以外の場所は木製の引き戸が使われている。
「奥の3分の2は食器類が入っていますが、手前の3分の1は文具や書類などの日用品の収納に使っています。カップボードはキッチンの後ろにつくられることが多いですが、これはサイドに造られているのでキッチンに立つ人と食器を出す人の動線がぶつからないんです。私たちはキッチンに2人で立つことが多いですが、キッチンの後ろも余裕があるので作業がしやすいですね」(奥様)。
さらに、天板にオークの幅はぎ材を使ったダイニングテーブルもモリタ装芸のオリジナル。置き家具まで一貫して自社で製作しトータルでコーディネートできるモリタ装芸の強みが発揮されている。
2階の階段のそばには5畳の子ども部屋が2つ並んでおり、それぞれ引き戸を開ければLDKと繋がる設計だ。
さらに、子ども部屋を通り過ぎ、階段を回り込んだところには奥様のワークスペースが。
コンパクトな空間だが、このちょっとしたスペースがリモートワークをする上で重宝しているという。
2階リビングで生まれたちょうどいい距離感
「家づくりの過程では営業の櫻田さんが僕たちの好みをよく理解されていて、それを設計の阿南さんとしっかり共有しながら進めてくださいました。ご提案を頂いた間取りは期待以上のものでしたし、そこから修正を希望することはほとんどなかったですね。以前住んでいたアパートでは冬場は窓のそばが寒かったり、結露していたりしましたが、今は結露もなく、窓の近くにいても寒くありません」とご主人。
「自然と家で過ごす時間が長くなりましたし、あまり休日の予定を立てなくなりました。リビングの窓から緑もよく見えて、家に居ながら外にいるような開放感も味わえます。子どもの友達が泊まりに来て、子どもたちが楽しんでいる様子を見られるのもうれしいですね」(奥様)。
「ご実家の生活リズム、K様の生活リズム、お互いに配慮しながら良い距離感を保つために2階リビングにしました。ご実家の玄関アプローチが南側に来るので1階リビングだとお互いに気になるでしょうし。また、ご実家の手入れされた庭が素敵だったこと、道路の交通量は多いけど街路樹も素敵で、常に室内から感じられたらいいなと思ったことも2階リビングにした理由です。2階であればブラインドも閉めずに済みますしね。暮らしの道具を一つ一つ大切にされていて、コーヒーも選びながら飲むのが好きだと伺っており、窓辺のダイニングでほっこりしてほしいなと思いました(笑)。限りある建坪の中で、個室は最小限にし、家族で使う場所はなるべくゆったりと。あとはK様ご家族の普段の暮らしを大切に話しながら計画していったら自然と形になっていました」と設計の阿南征伸さん。
「Kさんご夫婦は、一番初めにROMOの天野モデルをご案内しました。その時からモリタ装芸のことを非常に好きになってくださり、Kさんご家族の暮らしを一緒に考えるのがとても楽しかったです。当初は土地探しをされていましたが、最終的にはご実家の敷地内での計画となりました。そこに至るまでにたくさんお話をし、Kさんご家族の好きなものや理想の暮らしをたくさん知ることができたので、スッとイメージを形にすることができました。お引き渡し後もご家族みんなが楽しそうに暮らしていて、担当として嬉しく思います!」(営業の櫻田佳子さん)。
「2階リビング」と聞くと、反射的に抵抗を持つ人も少なくないかもしれない。しかし、2階リビングだから得られる豊かな暮らしがあることを、Kさん家族の住まいからうかがい知ることができる。
K邸
新潟市江南区
延床面積 123.38㎡(37.25坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年2月
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平