マンションリノベーション : K様邸

里山別荘に思いを寄せて

コンセプト

「里山の別荘で暮らしているような、マンションリノベーションは可能ですか?」
K様からそう依頼を受けてはじまったマンションリノベーション。豊かな自然と共にある里山別荘と、住宅地の一角にそびえるマンションの一室をどのように結びつけるか。これがリノベーションのコンセプトであった。
この部屋からは遠く弥彦山と、その裾野に広がる越後平野を見渡せる高台に位置する。その景色は夕暮れと共に刻々と色調に変化をもたらし、青空と夕焼けのグラデーション、その間を鳥の群れが飛んでいく光景は、里山に通じるものがあった。
そのイメージを脳裏に焼き付け、家族が暮らしていく情景を間取りに落とし込んでいった。床材は一枚の幅が15㎝と普通よりも広いホワイトオークの無垢材に。木目は粗いものを選んだ。理由としては、木材の幅があり優雅に見える「品格」と荒いワイルドな木そのものの「質感」を感じられる様に。「里山と別荘」⇄「質感と品格」、この部屋のコンセプトのベースになっている。床材を決めるために材木屋にK様と一緒と同行し吟味した。様々な樹種がある中、巡り合う素材との出会いがあり、この部屋への愛着につながっている。
マンションリノベーションは無味乾燥なものか。いや、そうではない。そこに描いた情景が現実になれば里山の別荘にもなりえるのである。

内観

内部はシナ材でつくった造作引き戸が間仕切りとしてリズミカルに並び、戸としての存在感を抑えて計画してある。その引き戸ごとに図書館スペース、子供部屋、寝室になっている。和でもあり、洋でもあり色調を合わせるように、壁・天井・躯体をやわらかい白で塗装し、床材と建具が浮き上がってくるように設えた。そこに北欧家具が置かれると、まるで里山の山荘から越後平野を眺めている気さえしてくる。